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☆20
『今さら、なんの用?』
草壁さんは、強い口調で問いかける。
『・・あんたには関係ない。』
直紀も、負けじと言い返す。
2人の間に、バチバチと音を立て、
火花が散っている・・・気がする。
『関係ない?なんで そう思うの?』
『あんた、陽向とつきあってる訳じゃない
だろう。陽向を見てたら分かる。』
『へぇ・・・・・。』
そこで、草壁さんは ずっと肩を抱いていた
腕を下ろした。1歩さがって、俺の顔を
じっと見つめる。
『ヒナちゃん。前も言ったけど・・・僕のところにおいで。何もしなくていい。いつでも、好きなだけ、いていいから。
欲しいものは僕が・・・全部あげる。』
『草壁さん・・・。』
それは、グータラな俺にとって まさに理想の生活だ。
俺はまだ草壁さんを好きになってはいない。
でも。
それを分かって、草壁さんは与えようと
してくれている・・・俺のために。
『陽向。また、一緒に暮らそう。
俺に・・・少しでも好きって気持ちが残ってるなら、俺を選んで欲しい。』
『え・・・・・?』
『離れてみて・・・失って初めて気づいた。
俺から突き放しておいて、勝手なのは
分かってる。でも・・・側にいて欲しい。』
『直紀・・・・・。』
多分、俺は直紀が・・・・まだ、好きだ。
忘れようとして、忘れたつもりでいても
忘れてなかった。
忘れられなかった。
でも。
俺はなんにも変わってない。
また、一緒に暮らしても同じことを繰り返す。
そして、また直紀は ガマンするんだろう、
・・・・俺のために。
―― 選べない。・・・どっちも。
俺は、どうすれば いいんだろう。
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