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グータラなキミと。☆10
『いらっしゃ・・・・』
入り口に背を向けてテーブルを
拭いていた陽向が、体を捻って
こちらに振り返る。
ーーと、俺を見た途端、
驚いた顔をして・・・
固まってしまった。
1ヶ月ぶりの陽向。
少し痩せたような気が
しなくもない・・・けれど。
間違いなく、陽向だ。
俺の、好きな・・・。
その名を、呼ぶ。
『・・・陽向。』
『な、直・・紀・・・・。』
『久しぶり。』
突然 現れた俺に驚いた顔の陽向。
でも、その表情の中に 嫌悪の感情は
見えなくて・・・
ひとまずホッと胸を撫で下ろす。
『ハイボールもらえるかな。』
『・・・・・・・・・』
『陽向?』
『・・・・あっ、はいっ。只今。』
ギクシャクと、カウンター席の方へ
歩いていく姿を見ていると
愛しさが込み上げてきて、
ずっと目で追ってしまう自分がいて。
陽向は覚えているかな・・?
初めて会った時、
俺が頼んだのも・・・
ハイボールだったんだよ?
なんて。
恋する乙女か。俺は。
でも、よかった・・・元気そうで。
少なくとも、見た目は。
陽向の心を傷つけた事を、
今更ながらに後悔する。
この1ヶ月、陽向はどんな想いで
暮らしていたんだろうか。
やり直せなくても・・・
きちんと謝りたい。
そう考えていると・・・
40歳前後の
いかにも金持ち風の男が
陽向の側に歩み寄っていくのが見えた。
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