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グータラなキミと☆12
『無理やり・・・じゃない。離して。』
やや、キツめに言われて、
俺は、はっと陽向を見て・・・
掴んでいた手を そっと離した。
『ごめん。それなら いいんだ。』
『・・・・ごゆっくり。』
そそくさと その場を去って行く陽向は
そのまま、店の奥に入っていってしまった。
『・・・・・・・・・。』
俺は、なんてバカな事を・・・。
俺たちは別れてるんだ。
陽向が、誰と何をしようが・・・
俺が、陽向に言える事なんて
なんにもないじゃないか。
俺が・・・・言える事なんて・・・・
その後は、何度かおかわりを注文したけど
陽向が俺のテーブルに来ることはなくて。
やっぱり、もう俺には
会いたくなんかなかったんだな、と
寂しさを感じつつ、これでもう・・・:
会えないかもしれないんだから
陽向の姿を目に焼きつけておこうと
閉店までいる事にした。
『直紀さん。』
4杯目のハイボールを運んできた
シンくんが、意を決したように
話しかけてきた。
『なに?』
『直紀さんは・・・ヒナに会いに来たの?』
『・・・うん。そうだよ。』
『それは・・・やり直したいから?』
『ああ・・・うん。それと、
俺が勘違いしてた事、謝りたくて。』
『あー・・・そうなんだぁ!よかった・・・!』
シンくんが嬉しそうにホッと息を吐いた。
『・・・よかった?』
『うん!頑張ってね、直紀さん。』
『え?でも陽向は・・・・』
チラリとカウンターの男を見る。
『大丈夫だよ!
直紀さんもさ、自分の気持ちに正直にね?
言いたい事、ちゃんとヒナに伝えてみなよ。』
『正直に・・・・。』
言ってもいいんだろうか。
まだ、好きなんだって。
まだ・・・・・。
他の客の相手をしている陽向をぼんやり眺める。
ふと、視線を巡らすと、あのカウンターの
男が俺をじっと見つめていた。
俺と目があった途端、唇の端を上げて
不敵に笑いかけてくる。
その目は、まるで・・・・
「お前に陽向は渡さない」
と、
俺を挑発しているかのようだった。
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