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第3話
「どんな感じ? 順調? 人数大丈夫? 結構増えたぞ」
夜、クラブとの打ち合わせも済ませた郁人と輝樹が合流し、晶と三人でいつもの居酒屋で夕飯がてらまたパーティーの打ち合わせ。打ち合わせと言いつつ何かしら理由をつけては飲みに行くのが恒例だった。
「うん、オーナーとも去年のあれで仲良くなってたし、大体の人数で大丈夫だって言ってもらえてる。シャンパンタワーもゲーム用の酒も特別に用意してくれるってさ。オーナー凄え良い人!」
郁人は終始ご機嫌でビールを煽りながら一人当たりのかかる金額を携帯の電卓を使い計算する。
「そうは言っても郁人と一日デートが条件だって言ってたよ? ウケるし! 郁人、お前ちゃんと話聞いてた?」
一緒に打ち合わせに行っていた輝樹が晶に話すと、郁人も「そうそう! オーナー面白いよな」と笑った。
「は? 何それ、そんなのダメじゃん。あのオーナーゲイなの? 郁人そんなの断れよ。金なんて幾らでも徴収できんだからよ」
「いやいや、そんな真面目に捉えんなよ。あんなの冗談でしょ? 社交辞令みたいなもんだろ? でもオーナーいい人だしゲイでもなんでも一日デートくらい俺は別に構わないよ?」
郁人は晶の心配をよそに屈託無く笑い「あのオーナー、オッサンだけど中々イケメンだよな」と輝樹に同意を求めた。
「まあ、お前がいいって言うなら任せるけどさ。でもデートはやめとけよ? 心配だわ、こいつ……」
「なら俺の代わりに輝樹がデートに行けばいい」
「は? なんで俺だよ! 嫌だよ!」
しばらくの間オーナーとのデート談義に花を咲かせる。どんどん話が脱線していくのもいつもの事。大体こうなった時のブレーキ役は晶の仕事だった。
「なあ、女の子の人数はこんなもん?」
唐突に晶は郁人に声をかける。郁人はハッとした顔で「問題ない」と適当に返事をした。
「そうだった! 忘れるとこだった! 晶、朱鳥ちゃんは大丈夫? ちゃんと来てくれる……よね?」
いつもの偉そうな物言いの割に、ちょっと弱気な言葉尻に晶も輝樹も顔を見合わす。
「ちゃんと返事もらえたから来ると思うけど……何? どうした? なんか郁人弱気じゃね? いつもならダメでも強引に連れてこい! とか言いそうじゃん」
輝樹も面白そうにウンウンと頷いている。
「なんかさ、違うんだよね。朱鳥ちゃん……巡り会うべくして巡り合った、みたいな?」
そもそも巡り会うもなにも、遠目でチラッと見ただけじゃん……と、輝樹は心の中でツッコミを入れる。
「は? 意味わかんね」
「うん。俺もわかんない……でも俺にとって朱鳥ちゃんは初めてなんだよ」
遠くを見つめうっとりと話す郁人に、晶も輝樹も呆気に取られる。
「は? 何言ってんの? 今まで散々女と遊んで来ただろが」
散々遊んできたくせにどの口が「初めて」といっているのか理解に苦しむ。段々面白くなってきて聞かされている二人はじっと笑いを堪えていた。
「そういうんじゃねえんだよ。んと……運命? みたいな?」
「何それウケる!」
輝樹は郁人の「運命」発言がツボにはまったのか、むせ返るほど爆笑して郁人にどつかれ回された。
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