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第5話

郁人の挨拶を皮切りにハロウィンパーティーが始まった。 今年もDJも入りフロアは仮装した人でひしめき合うようにして盛り上がっている。スタートして暫くはフリーの時間。その間に郁人は受付に戻り輝樹に朱鳥が来ていたか確認をした。 「え? いや……うん、来てたよ。中で見なかった?」 「嘘だろ? 見てねえし! わかった、ありがとう!探してみるわ」 慌てて戻るも朱鳥の姿は見えず、望んでないのにどんどん女に絡まれ始める。そうこうしているうちに輝樹も合流しうまい具合に女の子達を連れて行ってくれた。「珍しく役に立った」と郁人は輝樹に手を振り、取り敢えず酒を貰いにカウンターへ向かった。 「あれ? 郁人君一人? 珍しいね。はい、ビール。女の子探してんの?」 ビールを受け取りながら郁人はバーテンにコクリと頷く。可愛い子が来なかったか聞いてみると、つい先程ドリンクを貰いに来た子が飛び抜けて可愛かったと教えて貰った。 「魔女の格好してマスクもしてたけど、あれは絶対美人だよね。一人で来てたみたいだぞ。頑張れよ郁人君」 魔女の格好……周りを見てもどいつもこいつも仮装していてよく見ないと誰が誰だかよくわからない。早く見つけて声をかけておかないと他の誰かに取られちまうと、郁人は焦りながら朱鳥を探した。ふと視界に入ってきた一聖の姿。あの海賊の衣装は本当は俺が着るんだったのに、とイラッとしながら郁人は近付き通り過ぎようとした。 「え? マジかよ……ふざけんなあいつ」 一聖は結構背が高い。さっきは気がつかなかったけどよく見たら一聖に隠れるようにして女の子が一人腕の中に立っている。それはまさしくマスクをした魔女の仮装をした女の子で、遠くからでも郁人にはあれが朱鳥だとすぐにわかった。 「おい、その子には俺が用があるんだ。ちょっと外せ」 「は? 何だよ藪から棒に……嫌だね! 他当たれ」 一聖は突然来た郁人から朱鳥を庇うようにして腕に抱く。それを見て益々郁人はイラついて今にも喧嘩を始めそうになっていた。周りの人間は音楽も煩いのもあり全然そんな空気に気がつかない。朱鳥は一聖に捕まっているのが嫌そうに腕を突っぱねているようにも見え、堪らず郁人は一聖の服を掴み引き離そうとした。 「あ! 郁人こんなとこにいた! 何やってんだよほら、もうゲームの時間! 郁人? お前自分の仕事忘れてんじゃねえよ、ほらこっち来いって……」 一聖に半ギレで掴みかかっている郁人を、輝樹が文句を言いながら引き剥がす。これからゲームをするのに郁人が司会をする予定だったのが中々見つからずに始められないでいた。 「ごめんね! 朱鳥ちゃん! あとでちょっと話させて! ゲーム終わったらまた来るから!」 輝樹に引っ張られながら郁人は朱鳥に向かって大声を上げる。音楽が煩くて会話をするにはある程度近づかないとままならないので、恐らくはちゃんと聞こえてないだろう。郁人は自分のタイミングの悪さを呪った。 郁人は渋々気持ちを入れ替え司会に徹する。今からやるゲームは『嘘つきは誰だ』ゲーム。客が付けている名札にそれぞれ番号が振ってあり、輝樹が番号の書いてあるくじを引きゲームの参加者を決める。参加者は十人。その十人みんなでグラスに入ったドリンクを飲む。一つだけ度数のキツい酒があるのでそれに当たった人はバレないように芝居をする……ギャラリーに当てられなかったら、その十人の参加者の勝ちで景品が貰えるというゲームだ。クジを準備した輝樹は、こういうゲームの参加者は女の子が多い方が盛り上がる!と勝手に気を利かせ、男の番号のクジを若干数減らしていた。

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