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第6話

「はーい、じゃあ呼ばれた番号の人は前に出てね。まず十番── 」 輝樹が番号を読み上げていく。輝樹の思惑通り前に出てきたのは女の子が七人、男が二人…… 「マジかよ! 俺もだし!」 最後の番号を読み上げながら自分の名札を確認し、輝樹はワナワナしながら手を上げた。 主催サイドの輝樹がゲームに参加するのはどうだっていい。でも郁人にとって参加者の中に朱鳥がいたことの方が大問題だった。一応お酒が飲めない人には降りてもらうのだが、みんな大丈夫だという事でゲームは進行していく。一つのテーブルに見た目が同じ飲み物が入ったカクテルグラスが並べられ、ギャラリーの注目する中、十人が一斉にそれを一気に飲み干した。 飲んだ後も参加者は顔色ひとつ変えずにシレッとしている。輝樹は一人で赤い顔をしてうんうん唸っていたけど、輝樹のことを知っている人は皆それが演技だとお見通しで「わざとらしいんだよ、このザルがっ」と総ツッコミを受け笑いが起きた。ギャラリーの中から代表三名が嘘つきを指名するもみんなハズレで、このゲームは見事参加者十人の勝利で終わった。 「はい! では正解は…… 誰?」 「……はい」 輝樹の問いに遠慮気味に朱鳥が小さく手を上げた。拍手が沸き起こる中、景品を渡す係の郁人は気が気じゃない。せっかく朱鳥を見つけたのに話さないうちに朱鳥が注目を浴びてしまった。酒を飲むためにマスクを外した朱鳥はやっぱり誰よりも目を惹く美人だし、何故だか昔から知っているような初めて会ったような気がしない不思議な感覚に郁人はもう酔いが回ったのか、と目を瞬いた。 景品は一人一人に渡したかったのに、時間が押してるからといい輝樹が代表して郁人から受け取る。郁人はせっかく朱鳥に話しかけられると思ったのにそれも叶わず、また余計な奴らに囲まれてしまい全然朱鳥に近づけなかった。 ゲームも終わり、オーナーが嬉々としてシャンパンタワーをフロアに運び込む。元々薄暗かった場内にその煌びやかなタワーが運び込まれると一斉に皆の視線はそちらに向いた。郁人はいい加減痺れを切らし「後は任せた」と輝樹に諸々押し付けてフロアを回った。先ほどのドリンクはかなり度数を強くしたカクテルだったから朱鳥のことが心配だった。最後に見た朱鳥はまたマスクをしていたものの目元が赤らんで潤んでいるようにも見え、酔いが回って具合が悪くなってなきゃいいけど……と郁人はまたカウンターへ向かった。 「お? 郁人君どうした? いいの? シャンパンの方に行かなくて……あ! さっきの可愛こちゃん、残念だったねえ。ま、元気出せな」 「は? 何? どういうこと?」 バーテンの話だと、足元がおぼつかなくなっていた朱鳥を一聖が介抱するようにして支え、店から出て行ったらしい。恋人同士かと思うほど親密にも見えたと聞かされて、郁人は一気に酔いが覚めた気がした。 「悪い、輝樹と晶がいるはずだから後はよろしくって言っといて! 俺ちょっと出る!」 確かここから一聖の家は近かったはず…… 仮装姿のまま、大慌てで郁人は一聖の家に向かった。

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