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第61話
気付いたら俺はベッドで布団を掛けて寝ていた。
……まあ、突っ伏したままだけど、布団が掛かってた。
その掛かった布団の隣が少し沈んでいる。
その沈んだモノに俺は手を掛けた。
「ミク」
「……坊っちゃん。坊っちゃんは僕が好きなんですか?」
寝ている俺を見下ろすミクの頬に、片手で触れた。
プニプニ柔らかくて可愛い。
俺は夢の中にいるんだと思って抱き寄せた。
「そうだ。……俺は何度も言ってるのに、ミクはこの思いにちっとも気付かない」
彼は俺の気持ちには気付いてないから、せめて夢の中だけは幸せな気分でいたい。
「坊っちゃんは僕のお殿様なんです。手の届かない雲の上の人で、僕だけの人にはなってくれない人。そんな人からの好きは……もらえないから」
夢の中のミクは、俺の胸の上に乗ってきた。
程よい重みに、暖かい子供体温が心地いい。
「……ミクは天使で純粋で、誰にも穢れされない生き物だ。なのに俺は正義の旗本の三男坊徳○新之助にはなれない、ただの変態だ。俺が変態だからミクは俺の気持ちに気付かないのか?」
「本当は坊っちゃんが言う好きが、恋愛の好きなんじゃないかなって思うときがありました。でも坊っちゃんは、僕が恋愛で好きになっていい人じゃないんだってフタをしてました」
ミクの声は震えてる。
「フタをしても、坊っちゃんからまた好きって言って欲しくて……。気付かないフリをしてました」
ミクが泣いてる。
「……可愛い?僕は可愛い?……坊っちゃん、また好きって言って?構って?……僕自身が可愛いんじゃなくてもいい、一部分でも可愛いって思って、可愛いって言ってくれたらそれだけで僕のメイド人生に色が付きます」
俺に覆い被さる夢の中のミクの涙は綺麗だった。
その涙が、俺の首筋に落ちた。
その涙は人肌に温かいものだった。
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