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第70話

「サービスドリンクでーす」 ミクが楽しそうにメニューを見ているのを内心ヨダレを垂らしながら眺めていたら、注文していないはずのピンク色のドリンクを女店員が運んできた。 「まだ注文していないのだが」 「カップル席限定でーす」 「綺麗なピンク色のジュースですね」 ミクの頬のピンク色のほうが綺麗だし可愛いよ!! そして女の子店員は、昔懐かしのカップルが二人で一つのドリンクを一緒に飲む二人用のストローを差し出した。 「これでお飲みくださーい」 これが恥ずかしい。 だなら誰もカップルでは来ないんだろう。 店の客はこちらを凝視している。 「ひあぁぁぁっ、坊っちゃんと同じ飲み物など飲むなんて畏れおおいです!!」 ミク自身は恥ずかしいと言うより、主人とメイドが同じ飲み物を共有するのに躊躇いがあるらしい。 「このドリンクをお飲みにならないと、このカップル席には座れません」 それは好都合だ。 俺とミクは恋人同士だし、邪魔する奴は許さん。 俺はストローをさしてスマホを渡した。 「店員。俺とミクがこのドリンクを飲んでいるところを写メで撮ってくれ」 「え?!」 そしてこう続けた。 「ミク、命令だ。早くストローに口を付けて飲め」 「はっはい!!」 彼はドリンクをコクコクとゆっくり飲みはじめた。 そして俺も口を付けて……写メのシャッターがおりた。 写っているミクは、ドリンク色に頬を染めていてとても可愛い。 初デートのツーショットだ。 うむ、悪くない気分だ。

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