2 / 89
2.
「…っはー!生き返る!」
「ハルさん、酒強いんですね」
豪快にジョッキを煽る彼を眺めながら、枝豆を口に運ぶ。
「そりゃー仕事が仕事だし?」
「はは、流石です」
頬杖をついたまま、こてんと首を傾げる仕草は可愛らしいが、酒の量は半端じゃない。俺もそこそこ強い方だとは思っていたけれど、本職の彼に比べたら足元にも及ばないだろう。
「苦手、っつーか…酔いやすい酒ってあるんですか?」
単純な好奇心。思わず口から出たそれに、一瞬驚いたような顔をしたものの。
「んー……知りたい?」
ふっと翳った双眸に、心臓が跳ねる。
口を開きかけて。しかし、音にはならなかった。
「…ヒミツ。かっこ悪いし、教えらんねぇな」
視線を逸らされて、思わず息を吐き出す。たった数秒だったのに、身体中を支配した不思議な感覚。あれは何だったのか―――払拭したくて、ジョッキを引き寄せた。
ともだちにシェアしよう!