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3.
誰に対しても、本気になれなかった。
ルイさんやハルさんは格が違うが、俺もそれなりの見た目をしていると思う。加えて身長も179センチときているものだから、言い寄られることも多くて。
―――でも、
「やっぱり私のこと、好きじゃないんでしょ?」
目の前に座る女の子は、きっと可愛い部類に入る。胸だって大きいし、脚もすらりと細い。
今度こそ、好きになれると思っていた。
「………ごめん」
頭を下げる俺の耳に、カタリと椅子の動く音が届いた。立ち上がったまま、何とも言えない表情で見下ろしている彼女。
「…これ、明日渡そうと思ってたんだけど」
そう言い置いて、背を向けた。
今回は平手を喰らわなかった、とぼんやり窓の外を眺める。机の上に視線を移して、気付くのは。
『―Happy Birthday―』
今年も最悪な誕生日になりそうだ。
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