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6.
「お、これ俺の好きなメーカーじゃん!新商品出してたんだ~」
鼻歌でも歌いだしそうな雰囲気で嬉しそうに包みを開ける彼は、年上に見えなくて。
「甘い物、好きなんですね」
「まーな。でもあんまり食うと太るからほどほどに………ん?」
ちらりと見上げられて、手を止める。無意識のうちに頭を撫でてしまっていたことに、初めて気付いた。
「あ……っ、すいま、せん…!」
「…今日はセットしてないからさ、意外と柔らかいだろ?傷んでるけど」
何も触れずにいてくれたことが、ありがたい。黙って笑う彼は、例えどう見えたとしても…俺なんかより、ずっと大人だ。
「んじゃ、いっただきまーす」
ひょいひょいとチョコレートを摘んで口に入れる横顔は、紛れもなく幸せに満ち溢れていて。
彼女達には申し訳ないけれど、ハルさんに食べてもらえて良かったと喜んでいた。
この時は、まだ。
まさか、あんなことになるなんて―――…
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