6 / 89

6.

「お、これ俺の好きなメーカーじゃん!新商品出してたんだ~」 鼻歌でも歌いだしそうな雰囲気で嬉しそうに包みを開ける彼は、年上に見えなくて。 「甘い物、好きなんですね」 「まーな。でもあんまり食うと太るからほどほどに………ん?」 ちらりと見上げられて、手を止める。無意識のうちに頭を撫でてしまっていたことに、初めて気付いた。 「あ……っ、すいま、せん…!」 「…今日はセットしてないからさ、意外と柔らかいだろ?傷んでるけど」 何も触れずにいてくれたことが、ありがたい。黙って笑う彼は、例えどう見えたとしても…俺なんかより、ずっと大人だ。 「んじゃ、いっただきまーす」 ひょいひょいとチョコレートを摘んで口に入れる横顔は、紛れもなく幸せに満ち溢れていて。 彼女達には申し訳ないけれど、ハルさんに食べてもらえて良かったと喜んでいた。 この時は、まだ。 まさか、あんなことになるなんて―――…

ともだちにシェアしよう!