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14.
実は、途中から酔いなんて冷めていた。
いくらウイスキーに弱いとはいえ、チョコレートの中に入っている量だ。そう長くは持たない。
扉の閉まる音を聞いてから、どれくらい経っただろうか。のそりと体を起こしてベッドから下りる。
部屋に備え付けてあるシャワー室へ入って、思い切りコックを捻った。
冷えきった体に、熱い湯が染み渡る。
『…俺なんかにちょっかい掛けてないで、ちゃんと―――…』
続く言葉は聞こえなくても、何となく察してしまって。
「……ふ、…っ」
ずるずると壁伝いに座り込んだ。俯く頬にも、伝う水滴。
降り注ぐ、雨のような音を聞きながら。ただ自分の身体を抱きしめるより他なかった。
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