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18.
「その、『女の客に文句を言われないために男を選んだ』って…ルイからも聞いた?」
「いえ、直接は…ただ、きっとそうなんじゃないかって思います。あの女の人も言ってたし」
話を聞く限り、これはお互いに多大な勘違いをしている可能性がある。翔という男も気になるが、まずはそれよりも。
「今までのルイを思い出して。あいつが、自分の営業のために君を利用すると思う?そんなに酷い奴だったかな」
しばらくして首を横に振った、彼の顔がくしゃりと歪む。
「絶対に、芹生くんを傷つけるはずがない。」
ゆっくり頷いた彼が、なんだか今にも泣きだしてしまいそうで。あまり自分を責めないように、と頭を撫でた。
次いでするりと指を絡めて引っ張り、溶けたチョコレートを舐め取る。
「同じ性別の相手を想う気持ちが、どういうものか…教えてやるよ」
すんなり上手く行く訳もない、辛く苦しい道。進むにはきっと生半可な意志じゃ無理だろう。それでもあいつは、芹生くんを選んだ。
(貸しひとつ、だな)
こんなところですれ違ってほしくない。
俺が手伝って。
それで、ルイの心を少しでも分かってくれたら―――と。
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