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20.
これは賭けだった。途中で、芹生くんが気付いてくれなければ―――
俺は、ただ友達を裏切る悪者になってしまう。
「ほら、そんな所に立ってんなよ」
ベッドの端を叩いてやれば、おずおずと近寄ってくる芹生くん。可愛いとは思うが、それは恋愛の対象としてではない。
「あ、の…本当に……」
戸惑うのも当然だ。俺だって内心穏やかじゃねぇんだから。
「…ん?俺じゃ不満?」
見上げて笑えば、はいともいいえとも取れない微妙な首の動き。少し強引かと思ったが、手を引いて一緒に倒れ込む。
手のひらを重ねてシーツに縫い止める。顔を近づければ、震える瞼まではっきり見えて。
「どっちが良い?抱くか、抱かれるか」
―――早く、拒んで。
額を合わせて、祈るように瞳を閉じた。何も反応がないことへの落胆。
仕方がないと腹を括り、首筋に舌を這わせる。一瞬迷って、キツめに吸うと綺麗に華が咲く。痕を押しながら顔を覗けば。
「…っ……芹生、くん」
涙を溜める瞳が揺れていて。目尻を撫でると簡単に零れ落ちてしまう。
「ごめ、なさ……い…」
後頭部に手を添えて抱き起こし、そのまま腕の中に閉じ込めた。
「謝るなって。嫌だったろ?」
こくりと頷く彼を後押しするために。
「…俺じゃなくて、ルイだったら?」
見開いた目から流れる涙は、やっぱり綺麗で。本当に、幸せになってほしいと心から思う。
「逃げずにちゃんと話しておいで。きっと受け止めてくれるから」
挨拶もそこそこに、慌てて飛び出す背中を見送って。ベッドに倒れ込んだ。
俺に出来るのはここまで。……ルイには後で謝ろう。
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