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21.
「うおっ、と………」
バタバタと足音が聞こえて視線を上げれば。芹生が1人で降りてくるところだった。
思わず顔を背けてしまう。
こんな至近距離でも俺に気づかないなんて、よっぽど急いでいるのか。
慌ただしい背中が遠くなってから、ふと息をついた。
(何で一緒に出て来ねぇんだ…?)
疑問が首をもたげる。入って行く時の様子は、無理矢理には見えなくて。
(わっけわかんね………)
ともかく、俺のお目当てはまだこの中。
がしがしと頭を掻いて、待つことにした。
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