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28.
この前の一件で、あの人に何らかのトラウマがあるのは分かった。
抵抗する態度が気に食わなくて、思わず弾みで出てしまった取り引き。なぜ頷いてくれたのかは分からないまま、未だに連絡を取れないでいる。
もうすぐ月が変わるな、と。ぼんやりカレンダーを眺めていたところに電話が。少し迷って、通話ボタンを押した。
「…はい」
『よ、久しぶり』
この何とも言えない妙な気持ちで会話をしたくない。早く終わらせようと小さくため息をついた。
「で、用件は?」
『えー、そりゃねえだろお前。こんなに可愛いセフレ放っておいてくれちゃってさー…なに、今は満足してんの?』
この前はあんなに盛ろうとしてたじゃん、と。
冷笑混じりの声音が耳に忍び込んで、思わず声を荒らげる。
「っ…何なんですか、あんた…!」
『何ってセフレじゃん。まあいいや、まだ抱く気あんなら金曜どうよ?』
あんな約束、取り消しに決まってる。頭ではそう考えていたのに、無意識に紡いだ言葉は全く正反対のそれで。
「……場所は?」
ふ、と含み笑いをする彼は今…どんな顔をしているのだろう。
『この前のホテルで20時に』
電話を切った後も、脳内で響くのは不自然なほどに凪いだ声音。
何故だか胸騒ぎを覚えて、次こそは約束を反故にしようと決意を固めた。
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