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*31.

響く水音。噎せ返るほどの淫美な香りと、時折混じる高い声。感極まったようなそれに追い立てられて、ただ焦るより他なかった。 「ちょ、っと…あの…!」 「んー?イキそう?」 振り返った姿の、しなやかに浮き出る背骨が最高に卑猥で。すっと細まった双眸を直視できない。 「ゴム付けてんだからさ、遠慮なくどうぞ?ほーら…」 つ、と這わされた指先を辿って熱が移動する。思わず腹筋に力を入れると、楽しそうに笑うハルさん。 (……っ、の…煽りやがって…!) 余裕の仮面を崩したい。と、腹部に手を回しながら引き倒した。 「え、なん……っ、あ!」 良いところに掠ったのか、引き攣ったような声を上げる彼の様子に満足して。 「…形勢逆転、ですね?」 覆い被さる瞬間、自らの口角が上がっているのを感じた。 「ま、っ……ぁ、お前…!」 「ハルさんの良いトコロ……ここでしょう?」 軽く抉ってやれば恨みがましい視線を送られるが、涼しく受け流して。内壁をこそぐように奥へ進めばあっという間に音を上げる。 「や、ば…っい、く……!」 「ん……俺も、…っ」 揺れる昂りを極めつけに、と弄れば。弓のように反る背中と切ない嬌声を残して果てた。 波打つ内側に絞り取られ、整わない呼吸のまま伸び上がる。うなじに噛み付き、耳元へ。 「…もっかい……良い、ですか」 僅かに開く瞳が次の瞬間、綺麗な三日月を象った。

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