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33.
「……いっつも芹生くん、だな」
「はい?」
店内の音楽にかき消されそうなほど小さな声。聞き取ろうと顔を上げて、思わず固まった。
(…なん…って顔、してんだよ)
寄せられた眉、少し潤んだ瞳。
噛みしめた唇は痛そうで。
頭をかいて天井を仰ぐ。
いつも手酷くしている自覚はあったから、今日くらいは話だけで済ませようと決めていたのに。
こんなにも簡単に崩れると思わなかった。
代金を置いて立ち去るつもりなのだろうか、財布を取り出す彼をよそに立ち上がる。
「…いつもの所で良いですか」
「え、だって…」
戸惑う瞳を捉えたいと、掴んだ顎を上向かせた。
こんな俺でも一応、彼の身体を心配している。けれどそれを伝えたら何かが変わってしまう気がして、結局は胸の奥底にしまいこんだまま。
「……今日はとびっきり優しく抱いてあげますよ」
代わりに紡いだ言葉で伝われば良いのにと願う反面、無理を決めつける心に自嘲の笑みを浮かべた。
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