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*37.
自分が組み敷いたことのある女性達の視界はいつもこうなのか。
見下ろす瞳があまりにも優しくて、ともすれば勘違いしてしまいそうだ。
「…ハルさん、もしかして…ここも開発済み…?」
胸の頂を掠める感覚に、思わず喉を引き攣らせる。
と、同時。胎内に納めたものが再び硬度を取り戻すのを感じてしまった。
「なんで、デカくしてんの………」
呆れて眉を寄せれば、困ったように笑いながら。
「…可愛いなあ、と。思って」
そのひとことで、信じられないぐらい頭が真っ白になった。
過去に受けた忌まわしい仕打ちを、美しい言葉に替えてくれる。
それが、たとえ―――今だけだとしても。
「えっ…あの、痛いですか?」
突然泣き出した俺に驚くのも無理はない。
きっと正面から見てもらえるのは最初で最後だから、出来るだけ綺麗な姿を残したかったのに。
そう思えば思うほど、涙が溢れて。
「ち、が……っ、こわ…い」
安心させようと首を振りながら訴えるも、こんな状態では信じてもらえたかどうか。
そろりと見上げた先の彼は。
ふ…と、男くさく目を眇めて寄せられる顔。
「……怖くないよ、大丈夫」
このまま、しんでしまいたいと、おもった。
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