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39.

9月中旬。夏休みが終わり、また毎日の授業が始まった。 退屈とも思えるそれに耐えながら、茫洋と思い浮かべるのはハルさんの姿。 (…やっぱり、嫌がられたかな) 頬杖をつきながら、ふらりと視線を宙に浮かべる。 最後に抱いた時の様子が普段と違っているのは明らかで。セフレごときにあんな抱かれ方をされたくなかった、とでも言うのだろうか。 (考えたって分かんねぇ…) 頭を掻きむしりたくなる衝動を堪えて、教授の言葉に耳を傾けようと努める。 ところが、どう注力したところでやはり頭には入ってこない。 ため息をすんでのところで抑え、ふと蘇るのはのど飴のパッケージ。いつも控えめに上がる艶やかな声が枯れては大変だと考えたもの。 ただ差し出すだけでは味気ないと、口に運んだのがいけなかった。 ひどく柔い唇の感触は、今でも指先に残っている。意識してしまえば急に速まる動悸。思考を散らそうと奮闘する耳に、ひそりと忍び込んだ声は隣から。 「なあ、誕生日プレゼントどうする?」 「誕生日…?」 「ほら、ハルさんの」 弾かれるように向き直った。目を瞬かせた芹生は、それでもなお言い募る。 「確か…20日じゃなかったっけ?」 首を傾げる姿に、はいともいいえとも取れる呻きを返して机に突っ伏す。 「この前出掛けた時に良いプレゼント見つけてさ」 楽しそうな声音が頭上を通り過ぎ、我知らず強く目を瞑った。

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