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40.
「もうすぐ誕生日だそうですね」
芹生が大変な目に遭ってから数日後。話がしたくて、いつものホテルでハルさんと向かい合っていた。
「…誰からの情報?」
「芹生ですけど」
ふう、とため息をついた彼は諦めを含んだ表情で頷く。
「そうだよ、20日が誕生日」
「プレゼント、何が良いですか?」
「……え」
半開きの口をそのままに固まる姿を見て、やっぱりと苦笑い。
「…セフレの前に、友達でしょう?」
じわりと染まる頬を視界に捉えながら、辛抱強くその先を待つ。ややあって泳ぐ視線と共に落とされた言葉。
「……もう、貰った」
疑問が浮かぶであろう俺の顔を窺い、ごく小さな声で紡ぐ先は。
「…のど飴。くれただろ?」
「いや、あれはそういう意味じゃ…」
ちらりと投げられた視線を捉えかねて、困惑する。緩く首を振る彼に、それでも言い募った。
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