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「あれは置いといて、他に何かありませんか?」 あんまり高いのは無理ですけど、と付け足す。しばしの逡巡。 「…抱く時。ハルじゃなくて、橋本って呼んでほしい。今日だけで良いから」 色々と突っ込みたいけれど、まずは。 「橋本…?」 「そう。俺の…苗字」 少しだけ恥ずかしそうに笑って、視線を逸らす。なるほどそういうことか。 今日も抱くことを前提で話が進められている点に一抹の寂しさを覚えつつ、頷いた。 「それでプレゼントになります?」 むしろ情報を得た俺へのプレゼントのようなものだろう。胡乱げに問えば、その瞳が曇った。 「誕生日のこと…忘れられるくらい、」 向けられた一対の硝子玉。期待と不安が綯交ぜの中に僅かな怯えを見つけて、思わず躊躇する。 ―――…ひどく、して ぞわりと震えたのは、腰骨のあたりだろうか。 これだけ距離があるというのに。 弱々しく強請られた懇願は、今までのどんな煽り文句よりも魅力的だった。

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