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49.
クリスマスイブ。今年も芹生と朝まで飲むつもりで準備をしていた、夜。終電で新宿へ繰り出す予定だ。
「…あれ」
ベッドで震えるスマホを取り上げて、受話ボタンを押す。待ち合わせ場所を変えてほしいだとか、そんなところだろうと。この時の俺はあまり深く考えていなかった。
「もしもーし」
『あ…細田、?』
「ん、どした」
相手は芹生。やけに静かな背後の気配を感じて再び口を開く。
「…まだ家?」
『うん……あの、ごめん。ちょっと…体調、悪くて』
語尾から抜ける吐息に混ざるのは、若干の鼻声。何かあったのは明らかだ。
「分かった。……大丈夫か?」
『…平気だと思う』
一瞬の間 に引き攣る呼吸を聞き逃さなかった。けれど、気丈に振る舞う彼を信じよう。
「ん、ゆっくり休めよ」
『ありがと……じゃあ、また』
これで今日は寝るだけになってしまった、と。普段の俺ならそう考えるだろう。しかし。
浮かんだのは、明るく傷んだ髪の男。
無性に声が聞きたくなって、でも。
(仕事だって…言ってたよな)
邪魔するのも申し訳ない。
我慢しようとすればするほど、天の邪鬼が顔を出す。
このままでは眠るどころではない、と。半ばヤケになりながら電話を掛けた。
[――ただいま電話に出ることが出来ません。発信音の後に…―――]
安堵半分、落胆半分といったところか。
どちらにせよこれで本当に寝るしかなくなった。
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