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クリスマスイブ。今年も芹生と朝まで飲むつもりで準備をしていた、夜。終電で新宿へ繰り出す予定だ。 「…あれ」 ベッドで震えるスマホを取り上げて、受話ボタンを押す。待ち合わせ場所を変えてほしいだとか、そんなところだろうと。この時の俺はあまり深く考えていなかった。 「もしもーし」 『あ…細田、?』 「ん、どした」 相手は芹生。やけに静かな背後の気配を感じて再び口を開く。 「…まだ家?」 『うん……あの、ごめん。ちょっと…体調、悪くて』 語尾から抜ける吐息に混ざるのは、若干の鼻声。何かあったのは明らかだ。 「分かった。……大丈夫か?」 『…平気だと思う』 一瞬の()に引き攣る呼吸を聞き逃さなかった。けれど、気丈に振る舞う彼を信じよう。 「ん、ゆっくり休めよ」 『ありがと……じゃあ、また』 これで今日は寝るだけになってしまった、と。普段の俺ならそう考えるだろう。しかし。 浮かんだのは、明るく傷んだ髪の男。 無性に声が聞きたくなって、でも。 (仕事だって…言ってたよな) 邪魔するのも申し訳ない。 我慢しようとすればするほど、天の邪鬼が顔を出す。 このままでは眠るどころではない、と。半ばヤケになりながら電話を掛けた。 [――ただいま電話に出ることが出来ません。発信音の後に…―――] 安堵半分、落胆半分といったところか。 どちらにせよこれで本当に寝るしかなくなった。

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