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51.
「…だからってマジで来ちゃうんですね」
「あ?」
マフラーに顔を半分埋めた彼に睨まれ、思わず肩を竦める。急いで来てくれたのか、コートの下はスーツのままだ。
「…つか、お前の家じゃできねえだろ」
どうする、と眼差しで問われて。いつもの俺ならホテルへ向かうところだ。でも。
「……エッチしに来たんですか?」
ポケットの両手を引っ張り出して、握る。ただそれだけの動作なのに、綺麗な猫目がこぼれ落ちそうな程に見開かれて。
「イブだからって世間と同じことしなくても良いでしょう?」
「そ…っ、え………て、いうより、だって俺ら」
マフラー越しに彼の口を押さえ込む。自分達の関係を改めて聞かされたくはなかった。
もう、認めてしまおう。
お店にとって大事な日なのに。稼ぎ頭の称号を投げ打ってまで、俺の我儘に付き合ってくれる。そんな人を好きにならない方がおかしいというものだ。
「話したいこと、たくさんあるんです」
「……おれ、も」
「酒とつまみ買って、公園で天体観測。どうですか?」
返事の代わりに、ぎゅっと握られる手。
家から毛布を持ってこようと考えながら、ゆっくり歩き出した。
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