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「…誰も居ない」 「もう一つ大きい公園があるので、みんなそっちに行ってるんですかね」 穴場なんです、と笑う彼に手を引かれて。イブの夜が見せる幻なのかとふわふわした頭で考える。 「はい、この中どうぞ」 指し示されたのは、青色の球体。遊具なのか、中がくり抜かれているそれは大人が屈んで入るのにちょうどの大きさだ。 いつの間にか敷かれたシートに感嘆しつつ、先に潜り込む。 「え…?」 自然と体育座りになって、案外狭いことに気づいた。2人で並んで座れるか不安になり顔を上げると。さっきまで目の前に居たはずの姿が見当たらない。 「失礼しますよー」 突如背後から掛かった声と共に、ふわりと温もりに包まれる。半ばパニックになる俺を宥めながら笑う彼。 「寒くないですか?」 「え、なん……ッ、!」 ひょいと脇に手を差し入れられ、気づけば胡座を組んだ膝の上へ。咄嗟に立ちあがろうとしてしたたか頭を強打する。 「い…っ、てぇ……!」 「じっとしててください。はいこれ」 「…お前、どうしたの」 渡されたコーンポタージュの缶を手で転がしながら、ちらりと後ろを振り仰ぐ。しっかり前まで回された毛布の端を握りしめて。 「どうもしませんよ」 「………うそつけ」 どうもしない訳があるか。不貞腐れたような口調になってしまったのが恥ずかしく、缶のプルタブに手をかけた。 「ねえ、橋本さん」 返事の代わりにそっと背中を預ける。体重が移動したのを感じたのか、力の入る両腕。 「昔…付き合ってた人、と……何があったんですか」 問われて思い出す、苦い記憶。力なく首を振って俯く。 「…橋本さん、兄弟は?」 「え…妹が、ひとり…」 「妹さんかあ、可愛いんだろうな」 それから全く違う話をし始めた彼は、どんな表情をしているのだろう。脳裏にちらつく過去はあまりに重く、まだどうしても明かす気にはなれなかった。

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