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翌日。 居酒屋の個室で、弘人と向き合っていた。 「…で、話って?」 首を傾げて笑う、彼は。 全てを分かったような顔で。 「色々…嫌な思いもしたけど、最近は世話になったし。それでチャラに……っていうことにする、から」 今の自分達がどういう関係性なのかは不明だ。でも、これだけは言っておかねばと思った。 「…お前とは、もう会わない」 別れよう、でも。友達に戻ろう、でもなく。 自分なりの決別だった。 「まあ……なんとなく、そんな気はしてたよ」 ため息をついた彼は目を伏せる。 「……俺じゃ駄目なんだな、やっぱり」 「ごめん」 素直に頭を下げた。楽しかった学生時代、手酷い裏切りを受けて恨んだ時期、それから――― 「幸せだったよ」 記憶を無くしていた時期。自分は確かに、幸福と呼べる状況の中にあったと思う。そして今……不思議と穏やかな気持ちでいる。 感じたままを伝えれば、虚を突かれたように目を見開いて。 「…本当は。これを餌に縛り付けておきたいぐらいだったけど。彰の前じゃそんな考えが馬鹿みたいだったな」 そう言って差し出した封筒。中には金額を打ち抜いた、横長の紙が。かなりの高額に驚いて顔を上げる。 「これから一生かけて償うつもりだったんだ」 金銭的にも、精神的にも。と続けた彼に緩く首を振った。自然と浮かんだ微笑みは、その瞳にどう映っただろうか。 「…大丈夫、もう平気だから」 優しい声と後ろ姿がよぎって。たまらなく、会いたいと思ってしまった。

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