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橋本さんと付き合い始めてから、1週間後。今日は俺の誕生日。 「あっ、細田くん!」 「これ…受け取ってもらえますか?」 「お願いします…!!」 毎年のことながら、頭を抱えたくなる。ただでさえ暑いのに、こうも人が集まってしまっては困るだけだ。なんだかデジャヴを感じて辟易した。 ただひとつ、例年と違うのは。 「すみません。付き合ってる人のこと、悲しませたくないんで…」 貰えない、と頭を下げれば。ザワザワと広がるさざめき。残念そうにしながらも去っていく人。また、去り際に気持ちだけだからと押し付けてくる人。丁重にお断りをして、全員を見送った。 「よ、お疲れさん」 インターホンを鳴らし、待つこと数秒。現れた橋本さんはアイス片手にタンクトップという何とも奔放な格好だった。 「?何笑ってんだよ」 「……いえ、なんでも」 この人らしい、と思う。訝しげにこちらを振り返る彼の後について、リビングへ向かった。 辿り着いた部屋はクーラーで冷やされていて。猛暑で火照った体が冷やされていく。ほっと息をつくと同時に、軽装の彼が心配になった。 「風邪、引きません?」 「んー?」 咥えたアイスを視界に入れ、顕になった二の腕を触る。 ――…すると。 「っ、だ、大丈夫…だから!」 テレビに向けていたリモコンを取り落としそうな勢いで動揺した彼は、「さっきシャワー浴びたから、暑くて」と続けた。 「…ふうん?」 確かに濡れている髪。蒸気した頬はそれだけが理由ではない気がして、首を傾げる。なおも追求しようとする俺を遮り、彼が声を上げた。 「あー、と…今年も、プレゼント大量だったわけ?」 からかうような口調で笑う。けれど、その表情にどこか儚さを見てしまって。リモコンを奪い、テレビを消した。 「…細田?」 「貰ってませんよ。今年は、ひとつも」 同じ目線までしゃがんで、両手を握ってやる。見つめた先の瞳が見開かれ、徐々に泳ぎ出した。 「……そっ、か」 「うん。だって…あなたが、くれるんでしょう?」 ぐ、と詰まった彼は、細くため息を吐いた。そのままぎゅうと抱きつかれて、戸惑う。 まるで幼子が親にするような、情欲の欠片もないそれに胸を締め付けられて。自分の存在を頼りなさげに感じているのだろうか、ここにいても良いのだと安心させたくてその背中を摩った。 首裏に回った手のひらが冷えているのはアイスのせいか、クーラーのせいか。はたまた緊張のせいなのか。

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