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85.
8月下旬。
認めたくないが、これはさすがに。
(…恋人、不足?)
脳内にふと浮かんだその言葉を慌てて打ち消した。有り得ないだろ、キャラ的な問題として。
でも。
つい1週間ほど前、ルイと芹生くんを空港まで送っていった車内。仲睦まじく話す2人を見て、少し羨ましくなってしまった自分がいたのも事実で。
ぐるぐると悩んだ末、メッセージアプリを開く。
『あいたい』
あっ、と声を上げるも遅かった。変換未遂のまま送信されてしまったその単語。穴が開くほど眺めても、変わることはない。
忙しければ返事が遅くなるだろうし、後は為すがままだ。ため息をついてベッドに倒れ込む。
『今から行きます』
軽快な受信音が返信を告げた。それは間違いなく、メッセージを送った相手から。
「……は、」
忙しいとばかり思っていた。早すぎる返答に、しばらく放心状態で画面を見つめる。
『家いますよね?』
忘れていたかのように続けて問われ、はっと我に返る。同時に冷静さを取り戻して笑った。先にその確認からだろう、普通は。
もしかして、向こうも同じように思ってくれていた―――…?
少しでも早く、長く、会いたいと。
『鍵、開けとくから』
(…待ってる)
スマホをぎゅっと握った。そんな仕草が見えることはないにしろ、こうでもしなければ溢れる気持ちでどうにかなってしまいそうだ。
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