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 真智雄は応接用のローテーブルを挟んで、青年と向き合う。そして青年に本当の名刺を差し出した。  先ほどの偽物とは違い、深紅の光沢ある紙に金色で「angelus(アンジェラス) venditabant(セールスマン) M.T」と刻印されている。 「今回朴澤様の担当をさせて頂きます、俵と申します。」 「どうぞお掛けください。」 「はい、失礼します…。」  二人とも高級な革張りのソファに腰をかけ、真智雄は背筋を伸ばしてトランクをローテーブルにのせると、施錠を解いた。 「本日はお時間を頂き誠に有難う御座います……えっと、失礼ですが弊社のことは何方(どちら)でお聞きになりました?」 「先日、朴澤家のパーティーにて…我が社と取引している社長からこの名刺を頂きました。」  顧客は懐から真智雄が渡したものと同じ深紅の名刺を取り出した。その名刺は「R.M.」と刻まれている。それは亮太郎のものだった。 「どんな怪しい者が売り込みに来るかと思ってたが、存外我が社の新入社員よりも劣っていそうな平凡な営業で安心しました。」 「ははは…申し訳ございません、私まだ23ですので若輩では御座いますが、何卒御容赦を。」 (何だこいつ!見た目の切れ長の嫌味ったらしい顔立ちと性格が一致してんなぁ!くそ!)  心の中に不機嫌を閉まって、真智雄は立派な装丁のカタログを取り出した。 「我が『アンジェラス』の取り扱っております商品は…人間、もっと正確に申せば未成熟な少年たちです。」 「ほう……だからアンジェラス、ですか。」 「その通りで御座います。商品をどうお使いになるかはお客様次第で御座います。どんなお客様にも満足していただけるようなはある程度…。」  真智雄は客に見やすいようにカタログを開いてテーブルに置いた。  そして真智雄はポケットから白い手袋を取り出して着用する。 「さぁ、お好きな商品をじっくり…お選び下さいませ。」

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