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 真智雄は東中野のシェアマンションに住んでいる。このマンションは諸角の持ち物で、先輩の亮太郎も隣の部屋に住んでいる、社員寮のようなものだった。  そして住んでいるのは社員だけではない。  入り口を開けると、1階フロアは住人の共同フロアとなっている。真智雄がげっそりとした表情で足を踏み入れると、真智雄の元にトテトテと可愛らしい足音が近づいてくる。 「俵さん、お疲れ様です。どうしたんですか?今日はお疲れですか?」 「ああ……フェリスくん……ただいま…。」  男性の中では決して大きい方ではない真智雄に上目遣いでキラキラと見つめてくる亜麻色の髪をした美少年は、そのまま真智雄に抱きついてきた。 「じゃあフェリスがぎゅーってしてあげるねー。」 「ははは…有難う。」  力なく笑いながら真智雄はフェリスという少年の頭を撫でる。 「あ、フェリスくん…アルバくんって部屋?」 「え?アルバなら誠子(せいこ)ちゃんと一緒に後片付けしてるよー。」 「ああ…そう。」  真智雄はフェリスをそっと引き剥がすと、スタスタ歩いて共同ダイニングに向かった。すると碧眼で茶色の髪を後ろで束ねている少年が懸命にテーブルを拭いていた。 「あ、俵さん、お帰りなさい。」 「ただいま…えっと、アルバくん……まだ片付け時間かかるかな?」 「えっと、これで僕は終わりですけど。」 「じゃあ終わったらリビングに来てくれる?」 「はい…真智雄さん、お夕飯は?」 「後でいただくよ。」  真智雄はアルバにそういうと共同リビングの大きなソファに倒れ込みながら、ネクタイとワイシャツの第2ボタンを外して寛いだ。 (あーあ、折角仲良くなったのに、お別れは突然なんだよなぁ。ちょっと寂しいなぁ。)  真智雄と亮太郎はここで『商品』となる少年たちとも暮らしていた。少年たちは合同部屋で部屋割りをされているが、真智雄と亮太郎はワンルームの部屋が与えられてる。だが、食事は自然と共同スペースで摂るようになって、商品とされる少年たちとも親睦を深めた。  亮太郎からは、この少年たちとの親睦も営業の為に必要な仕事と教えられたが、真智雄はいつも情が湧いてしまっていた。

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