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Ⅸ
予想通りに環八は混んでいた。何とか成城エリアに辿り着いて、一度コンビニに駐車して休憩をとった。
真智雄はパーキングにしてふとバックミラーを見ると、アルバは胸に何かを抱えるように祈っていた。
「アルバくん、それお守り?」
「…はい。よく覚えていないんですけど、ずっと昔から大切にしているものです。昔、何処かの大きなお屋敷のお庭に咲いてたソメイヨシノの押し花の栞です。」
「へー…お庭にソメイヨシノ…すっごいね。」
(アルバくんって元々は社交界とかに出てたような家柄だとか言ってたなぁ…俺の茨城の実家に庭なんかねぇぞ。門の前に猫よけのペットボトルが放置されてるだけだし…。)
真智雄は富豪のおぼっちゃまの運転手気分になった。真智雄は「ちょっと待っててね」とエンジンはかけたまま、急いでコンビニで買い物をする。
真智雄が気合を入れるための栄養剤とアルバの為に小さいミネラルウォーターを。勿論ストローをつけてもらうのも忘れずに。
「アルバくん、一応水分補給ね。」
「ありがとうございます。」
真智雄は蓋を開けてストローを挿したミネラルウォーターのペットボトルをアルバに渡した。真智雄はグイッと栄養剤を飲んで、「ウッシャー」と気合を入れた。
「じゃあ車出すよ。シートベルトしてる?」
「はい。」
車はそのまま、成城の高級住宅街へ入っていく。目的地の朴澤別邸はもう間も無く。
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