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Ⅱ
東京都中野区のとあるこってり系ラーメン屋の行列に仲良く並んでいる異色の2人組がいた。
「劔 さん、俺昼休み終わっちゃいますよぉ…。」
「あーそう。んじゃ俺が真智雄 の分まで食べてやんよ。」
「それはムカつくので意地でも食べます。」
1人はアンジェラスの新人営業マン、俵 真智雄であった。彼は現在昼休憩で昼食をとるためにこの行列に並んでいた。
そんな真智雄と親しげに話している人物の風貌は、周りの人が目を合わせまいとするような厳 つい出で立ちである。髪はアッシュグリーンのテクノカット、服装はヒョウ柄のシャツが第3ボタンまで開いていて、ストライプのジャケットに何故か黒のスニーカー、こめかみ、眉間、鼻にピアスを装着しており、耳にも最大限に拡張されたピアスホールがあり、どこからどう見てもチンピラか半グレのそれだった。
彼は、劔 好重 、チンピラでも半グレでもなくしっかりとヤクザである。
そしてただのヒラのヤクザでもない。23歳という若年ながら、関東の一大勢力でもある「東郷 会」の直系「守隨組 」の若衆筆頭というポストに付いていた。
何故こんな接点もなさそうな2人がこうして親しいのか。
「辛にんにくラーメン大ですね、トッピングは?」
「ニンニク、玉ねぎマシ、アブラ、卵。」
「ニンニク、玉ねぎマシ、アブラ、卵。」
「ラーメン食べ歩き」という共通の趣味を持っているからであった。2人は予定が合えば、美味しいラーメンを求め好重の運転で関東各地に遠征するほどにラーメンに対して情熱を注いでいる。
「真智雄ぉ、マジで時間大丈夫か?」
「リョーちゃん先輩に遅れると連絡したのでいいんです。」
「けーっけっけ、それでこそ俺の親友よ。今度は勝浦でも行くか?」
「いいですね、勝浦タンタン!」
社会人になって1年弱、今1番仲良しなのはこのおっかないヤクザであることを真智雄は親類にも大学時代の友人にも言えるわけがなかった。
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