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 午後5時、少し早めに退社した真智雄は原付に乗っていつも通りに帰る。途中コンビニ寄って飲み物を選んでいた時だった。トントン、と肩を突かれる。  「ん?」と声を出して振り向くと、真智雄より少しだけ背の低い黒髪のマッシュルームカットの少年が無邪気に笑っていた。 「あれ?ルクスくん、どしたの?」  真智雄はゆっくり、大げさに口を開いて話した。それをじっと見たルクスと呼ばれた少年は真智雄のシャツを小さく引っ張って、お菓子が陳列している棚の方を指す。そこには背の高い女の人、ではなく、オカマがいた。 「誠子さん。」 「あら真智雄ちゃん、もう上がりなの?」 「はい。あ、今日はルクスくんが夕飯当番なんですね。」 「そうよー。お夕飯は期待出来るわよん、ねー、ルーちゃん。」  誠子が「ねー」と笑うと、ルクスは可愛らしくにこりと笑い、真智雄を見ると拳で胸を叩く仕草をした。 「なるほどね。」  そう声を出すと、真智雄は持ってた買い物かごを左手に持ち替えて、親指は真っ直ぐにその他の指は水平に曲げて首からあごの下に上昇させる。それを見たルクスはまた喜んで笑うと、ルクスは頬を2回叩いて右手をお椀のような形にして左手を下に指は広げて、その左手を上に上げた。 「頼んだぜ。」  真智雄は謝るように右手を口元で揃えるとそれを前に出した。そしてルクスはオッケーと指で返事をした。  真智雄は先に出て行った誠子たちの影を何と無く目で追っていった。 (ルクスくん…もうすぐ19歳だっけ……どこか引き取り手があればいいんだけど……でもなぁ…。)  何と無く気が重くなってため息を吐いて真智雄も会計をするためにレジに向かう。

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