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第11話
はあ〜…。
しんと静まり返った部屋の中に、もう何度目かわからない大きなため息が響く。もちろん犯人は俺だ。
帰ってくるなり制服も脱がずにベッドに横になると、もう何もかもがどうでもよくなってくる。課題も出ているし腹も減ってきたし、制服を脱がないとシワになってしまうし風呂にも入りたい。けれど身体が動いてくれない。
それもこれも全部、智瑛のせいだ。
「智瑛は、本当に俺のこと好きなのかな…」
好きでいてくれていると思っていた。
大好きなミオちゃんの話を嬉しそうにしてくれたり、ミオちゃんのイラストやグッズをいの一番に見せてくれたり、時にはデザインのアドバイスをさせてくれたり。大切な趣味のことに口出しをさせてくれるから、俺のことも大切に思ってくれているんだと思っていた。
別に人にアドバイスを求めることに抵抗がないから、ただ単に側にいるという理由で意見を求められていたのかも。
それってすごく悲しい勘違いだ。
俺はそっと目を閉じた。
瞼の裏にすぐに浮かぶ智瑛の笑顔。胸がキュッと小さく悲鳴をあげて、俺はまたため息をついた。
と、同時に今度はピロリンと高い音が響く。智瑛専用の通知音だ。
のそっと手だけを伸ばして寝転んだままLINEを開くと、智瑛が自分で使いたくて作ったというミオちゃんのイラストのスタンプが『こんばんは!』と元気に手を振っている。ボーッとそれを眺めていると、続けてメッセージが送られてきた。
『そういえば昨日、なんか言ってたよね?今日何か話したいことでもあった?』
「そういえばってなんだよ…」
ボソッとこぼれた本音。
ひとつこぼれてしまうと、決壊したように後から後からあふれてくる。胸の中にどす黒い色をした嫌なモヤがかかって、元気いっぱいのミオちゃんスタンプがやたらと憎たらしく見えた。
「別に、もういい…」
俺のことなんて、二の次三の次のくせに。
俺は感じた通りに『もういい、気にするな』と素っ気ない返信を送り、その直後には『もう寝るから』と更に突き放すようなメッセージを送った。
すぐに既読はついたが、智瑛からの返信は来ない。おやすみのスタンプくらい送ってくれるかと期待したが、気を悪くしたのかも。どちらにせよ返信がないということは今日はもうスマホを置いてiPadでひたすら絵を描くなりグッズを作るなりするのだろう。自分で突き放したくせに、悲しくて寂しい。
「智瑛のばかやろー。あほ。キモオタ。うそ、カッコいいオタ。」
思いつく限りの罵声を枕に向かって吐き出したが、何一つ智瑛に届くはずもない。
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