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第12話
結局、その後智瑛からの連絡はなかった。美術室に代わる秘密な逢瀬の場所を相談したかったのに、寝ると突き放した俺のせいだ。
本当にしばらく会えないかも。もしかしたらそのまま自然消滅?
言いようのない不安で枕を濡らした寝不足の朝、荒れた肌にクマの出来た目元にガッカリした。それもこれも全部智瑛のせいだと理不尽に責任を押し付けて、俺は朝食を撮ろうと食堂に向かう。
そしてその食堂で、バッタリ智瑛に出くわした。
「…智瑛。」
俺の顔を見るなり智瑛の顔が曇り、不安が大きくなる。
しかしその時、普段ならこういうところで目も合わせない智瑛が真っ直ぐに俺を見て、何かを言いかけた。けど俺は聞きたくなくて、ふいとそっぽを向いて智瑛から逃げようとしてしまった。
「待って優太!」
智瑛は逃げようとする俺の腕をガシッと掴んでまで俺を引き止めようとしたのに、俺はカッとなってその腕を振り払ってしまったのだ。
「…俺といるところ、見られたら困るんだろ。」
そんな捨て台詞まで吐いて。
しまった、と思った時にはもう遅い。智瑛の顔は悲しそうに歪んで、掴まれた腕は離された。人がごった返す朝の食堂ではきっと俺以外の誰にも聞こえなかっただろう小さな小さな声で、ごめん、と呟いた智瑛は、俯いてしまった。
ああ、そんな顔をさせたかったわけじゃない。いつだって昔と同じキラキラの笑顔で俺を引っ張ってくれるヒーローでいて欲しいのに。
「ちあ…」
「浅尾せんぱーい!この席空くのでどうぞ!」
謝らなきゃ、と思ったその意気は知らない声に阻まれてあっという間にしぼんでいった。
その声に返事をしなくちゃと振り返ったその一瞬で、智瑛はくるりと振り返って離れていく。どんどんどんどん離れていく。まるで、その距離が今の俺たちの距離のよう。
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