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第13話

「俺のバカ!アホ!!根暗!!!陰険!!!!」 ここ数年で一番の大声は、枕が大部分を吸収してくれた為に部屋の外まで響かずに済んだ。 朝から智瑛と一悶着起こしてしまい、日課の美術室での逢瀬も当然無し、LINEすら一通もない。 俺は焦った。智瑛と俺は、共通の友人というものがいない。同じ学園の同学年ではあるものの、オタク活動に忙しい智瑛と生徒会活動中心の俺では友人関係が被るはずもないからだ。 だからこのまま自然消滅してしまうのではという恐怖が拭えない。智瑛からの連絡が途絶えたらアウトだ。廊下で目も合わせてもらえなくなったら完全に終了のお知らせだ。 それなのに俺の方から智瑛の手を振り払って、智瑛にあんな顔をさせてしまった。 俺は枕を抱いたままもぞもぞと起き上がると、クローゼットを開けゴソゴソと美術室から持って帰ってきたままの紙袋からミオちゃんの衣装を取り出した。 ハンガーに掛けずに1日放置していたせいで、スカートが少しシワになっている。 「…俺が傷つけてどうする…」 智瑛に元気を出して欲しいだけだったのに、いつのまにか智瑛にコスプレを披露することが目的になっていた。智瑛がiPadを手に入れて元気になったなら、それでよかったのに。 俺はおもむろに制服を脱ぐと、ミオちゃんの衣装に袖を通した。シワになってしまったスカートの形を整えて鏡に向かって座り込む。 メイクもヘアセットもしていないコスプレは見られたものじゃない。擬似おっぱいもしていないから胸元がカパカパしていて不恰好だ。そのみっともない姿が今の俺にぴったりで、俺は泣きそうになった。 涙を堪えて鏡の前に蹲っていると、部屋のインターホンが鳴る。 インターホンが鳴るのは珍しい。きっと誰かが急な用事で訪れたんだろうが、今俺は絶賛女装中だ。出られるわけがない。当たり前に居留守を決め込んでいると、ドアの向こうから大好きな声が聞こえてきた。 「優太、いないのかな…」 「ち、智瑛!?」 「えっ…いるの?」 「あっ!」 しまった…! 大声なんて出したらこの薄いドアは筒抜けだ。居留守が完全にバレてしまった。 なんで智瑛がここに?俺と会っているところを見られたくないと頑なだった智瑛がここに来ているなんて、天変地異の前触れか?それとももう起きているのか?明日地球が滅びるのか? ドアを隔てた一瞬の沈黙。 それを破ったのは智瑛の方だった。 「…優太、開けてくれないかな。話があるんだ。」

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