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第17話

「幻滅なんてするわけない!」 「優太…」 「今も昔も、智瑛は俺のヒーローだよ!本気で智瑛をカッコいいって、すごいって思ってる…本当に好きだから、一緒にいたいから、智瑛の為なら付き合ってること隠すくらい何でもない!」 「優太!」 智瑛の手が伸びてくる。 あ、抱きしめられる…もしかしてキスとかされちゃう!?ここで!?嬉しい、けど心の準備が!! がつん! と鈍い音がして、額に激痛。思わず蹲り、数秒して痛みが引いてから顔を上げると、智瑛は顎を抑えていて、二人で目が合った瞬間に噴き出した。 「優太、おでこ赤くなってる。」 「智瑛だって、顎が赤いぞ。」 「ふふ、ごめんね、痛かったよね。俺ギャルゲーとエロゲーは沢山やってるけどリアルな恋は未経験のキモオタだから失敗しちゃった。」 「エロゲーはダメだろ、17歳。」 「シーッ!」 智瑛は悪戯に笑って、俺も釣られてまた笑った。一頻り笑うとお腹が痛くて、目尻には涙が溜まっていた。 智瑛は息を整えると、忘れられたようにその場に放り投げてあるミオちゃんのコスプレ衣装を手に取った。 「ね、優太…これ、着て見せてよ。」 「え…」 「見たいなぁ、優太の可愛いところ。」 「かわっ…」 可愛い、なんて。 男の俺が女装、それもアイドル衣装を着ているところを見たいなんて。 見せるつもり満々だったくせにこの土壇場で躊躇う俺に、智瑛はにっこりとヒーローのようなキラキラスマイルで衣装を渡してきた。中身はガチオタでも見た目はイケメンだ。 「見せてよ。優太の好きな女装。優太の好きなもの、俺も知りたい。」 俺はグッと息を詰めた。 そんな言い方、ズルい。 智瑛が好きなミオちゃんを俺も知りたいように、智瑛も俺が好きなものを知りたいと思ってくれるなら。そう思ってしまうじゃないか。 「…わ、わかった。恥ずかしいから、洗面所で…だから、ここで待っててくれ。」 衣装にメイクボックス、ウィッグにヘアアイロン。笑顔で手を振ってくれる智瑛を背に、俺は洗面所に立つ。 やるぞ、優太。 磨きに磨いた女装スキルを、今こそ発揮する時だ。

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