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第18話

動くたびにふわりと揺れるフレアスカートは膝下で上品な長さ。 きゅっと絞られたウエストは細くてか弱い腰を強調し、大胆に開いた襟ぐりから覗くのは華奢な肩。その大胆な襟ぐりを埋めるのは、男の俺にはない豊満な胸。けれど女装用のブラを装着し、その中にぷにょんとした偽物のおっぱい入れると、カパカパした胸元は見事にフィットした。 メイクはほんのりピンクのナチュラルメイク。綺麗なぱっちり二重につぶらな黒い瞳。薔薇色の頬にぷっくりした艶々の唇。 一度も髪を染めたことがないというミオちゃん自慢の黒いロングヘアは、ふんわりと緩く巻いて耳にかけておく。 いつものお堅い銀縁眼鏡を外して、濃紺のおしゃれな眼鏡をかけたら完成だ。 鏡に映る、ミオちゃんの格好をした俺。 我ながら、まるで自分ではないみたいだ。 俺は深呼吸して覚悟を決めると、智瑛の元へ向かうべく洗面所のドアを開けた。 「ち、智瑛…」 小さな小さな声で呼びかけると、智瑛がパッと振り返る。 智瑛は目を丸くして上から下までじっくりと俺を見て、そして今度は下から上へと戻ってきた。 そんなにまじまじと見られたら、粗が目立ってしまう。女の子とは程遠い肩のラインや筋張った脚、くびれのない腰も。 俺は恥ずかしくなってそっと視線を逸らした。顔から火が出そうだ。 「な、何か言ってくれ…」 無言でジッと見つめられるのが一番辛い。 俺のか細い懇願に智瑛はハッとして、しかしやはり上から下までじっくりと見た。 「…ビックリした。思ったよりずっと…」 「ずっと…?」 ずっと似合わない、とか、気持ち悪い、だったらどうしよう。 智瑛が面と向かってそう言うとは思えないけど、だからこそ智瑛の反応が気になる。 一瞬の後、智瑛は顔をみるみるうちに真っ赤にして、大きな男らしい手で顔を半分隠して小さく呟いた。 「…ずっと、かわいい。」 最高の誉め言葉に思わず涙が溢れた。 せっかく上手くいったメイクは台無しで、けれどそんなこと構っていられないくらいに嬉しくて幸せで、俺はやっぱり可愛い女の子とは程遠い汚い泣き顔を智瑛に晒した。 「優太、今度こそ…ちゃんとキス、していい?」 けれどそんなちっとも可愛くない俺に、智瑛は触れるだけの優しいキスをしてくれた。

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