10 / 15
依頼 その二
雨音が聞こえる。
じめじめとした空気がまとわりつく。
コチコチと聞こえる、時計の音。
膝元にお茶の温かい湯気を感じる。
「慶明様」
か細い声が聞こえる。
まだ若い男の人の声だ。どこか悪いのか、時々咳をしている。
「どうか、お願いします。弟を助けてください」
「……上手く行くか分からないですよ?あなただってタダでは済まないかと」
しゅるしゅるとどこからか変な音が聞こえる。
(蛇……?)
「私はどうなってもいいのです。ただ、この指輪を返したいのです」
コトリと音がした。
小さな木箱のようなものだろうか。その中に指輪が入っているらしい。
「……では、お話しください」
「……私たち兄弟は双子で、弟の流(ながれ)は私を人一倍慕っていました。それは周りから見れば、異常だったのかもしれませんが、私にはそれが普通のことで、慕ってくれる弟が可愛くて仕方ありませんでした」
雨足はまだ激しい。
瓦を叩く雨粒の音が、耳に響く。
ともだちにシェアしよう!