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第7話
お兄さんを見た瞬間に僕には分かった。
お兄さんの匂いを嗅いだ時
それは確信に変わった。
「見つけた」
だけどお兄さんは今度もやっぱりΩでもっと悲しいことに僕は人間ですらなかった。
僕は…猫だった(なんで?)
もしもお兄さんがもっと笑っていてくれたなら
ほんの少しだけでも幸せそうに見えたなら
僕はこんな賭けはしなかった、と思う。
僕の生まれ変わった猫はちょっと特別な猫だった。
まぁ人間の頃も超スーパーαだった僕だから当然猫になろうとその超スーパーさは変わらなかったという訳だ。
あっごめんなさい。ちょっと自慢しちゃった。
お兄さんに叱れてしまう。
話しが外れたけどどう特別かというと、
それは……
*
数日前のこと。
いつもの様にお兄さんが通る道で待ち伏せしていると
白い雌猫から
にゃーと声をかけられた。
とても手入れの行き届いた綺麗な猫だったけれどもちろん僕は全く興味なんてなかった。
「あなた、トオルさんでしよ?」
「?!!」
「私のこと忘れた?」
「お前が……なんで」
クルクルと疑問が頭の中で回る。
「私も猫に生まれ変わったの」
「お前のせいでお兄さんはっ」
ハロウィンで賑わう人混みの中で
血を流して倒れているお兄さんを見つけた時の気持ちが蘇り僕は全身の毛が逆立つほどの怒りに襲われた。
今、この瞬間こいつを殺してやりたい。
「だってあの人が悪いのよ?何の能力もないΩの癖にあなたを誘惑するんだもの。あなたもひどいわ、あなたの為に殺してあげたのに後を追うなんて」
「僕の為だって?」
「そうよ、あの淫乱Ωに誘惑されたのでしょ?弟にまで手を出すなんて流石尻軽Ωだわ。だけど私たちは結ばれる運命なのね。こうやってまた巡り会えた。会えて嬉しい」
「うるさいっ。 誰がお前なんかと!僕が好きなのはお兄さんだけだ」
「目を覚まして、あなたは惑わされてるだけよ」
「惑わされてる?あははは、そうだよ、僕はずっとずっと前世も今も……未来も、ずっとお兄さんに惑わされ続けるんだよ」
ーーそれこそが運命だ
「嫌だと言われたら?」
「そんなことあるわけない」
「だけど所詮は猫と人間」
「黙れ!」
「分かったわ。ねぇそれなら賭けをしない?私の力でハロウィンの夜一日だけあなたを人間に変えてあげる。思い出して貰えたらあなたの勝ち」
「そんなことが?」
「もちろんどの猫にでも出来る訳じゃないわ」
ーー私は特別なの
僕はその賭けにのった。
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