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あれから1か月後……02

―智紀side― 「あ、やば。もう……出るっ」  ブルッと震えると、俺はライさんの手の中で射精した。  クテッとソファにもたれると、床にひざをついて座っているライさんの顔を見た。  ライさんが、俺の精液で汚れた手を見るとにっこりと笑った。 「俺……バイトしようかな」  ぼそっと呟くと、ライさんが首を振った。 「バイトなんかする必要なんてありませんよ。生活に必要なお金は、恵から貰えばいいんですから」 「そういうわけにはいかないだろ。今はもう……道元坂とは何の関係もないんだし」  俺は語尾になるにつれ、ぼそぼそと声が小さくなる。  不本意な別れ方……だったから。いや、きちんと別れたわけじゃないから、と言うべきかも。  道元坂が用意してくれたホテルを逃げるように飛び出し、ライさんが住んでいたマンションを売った金でアパートを借りて、二人で細々と生活を始めた。  いい加減、ライさんのお金を頼るんじゃなくて。俺自身で生活できるように、自立しないとって思うんだけど。  ライさんに相談するたびに、あまり良い顔をされない。  金が必要なら、道元坂に請求すればいい、とか。ライさんのお金を使えば良いとか。  お金があるのに、わざわざ外に働きに行く必要なんて無いってライさんは言う。 「恵には、智紀の生活を支える義務があるんです。欲しいものがあるなら言ってください。僕から恵にお金を請求しておきますから。倍額で」 「いや……別に、欲しいもんがあるわけじゃねえんだけど。ただ……なんつうか。生活にメリハリをつけたいんだ。ずっと家に籠ってるのも、どうかと思って……さ」  俺は短パンを引き上げると、苦笑した。  やることと言ったら、テレビゲームか家事。時々、こうやってライさんに性欲の始末をしてもらって。  外に出かけるのだって、ライさんに送り迎えしてもらって。お金の面倒も、ライさんにみてもらって。  全てにおいておんぶに抱っこ状態だ。  俺はパタンとソファに倒れ込むと、ライさんをじーっと見つめた。 「なあ……ライさん。ライさんは、蛍とどうなってるの? 俺に付き合う必要なんてないんだよ? 俺は道元坂に捨てられたみたいなもんだけど……ライさんは違うだろ? 俺と一緒になって、道元坂から隠れるような生活をしなくてもいいのに。ずっと会ってないんだろ?」 「何で僕が、蛍に会わないといけないんです? 僕にとって一番は、智紀です。それに智紀は恵に捨てられていませんから。恵が智紀を捨てるようなら、僕が責任もって殺しますのでご安心を」 「こ……殺さなくていいから! てか、ライさんの冗談は冗談に聞こえないから、怖いなあ」 「もちろん、本気ですよ」  ライさんがにっこりと笑って、俺の膝にチュッとキスを落とした。 「恵にはそれ相応の罪があるんですから」 「え? 罪って……???」 「いえ。僕の独り言ですので、お気になさらず。それとバイト件は僕に任せてもらえませんか? 良いのを探してきますから」 「いや、自分で探すよ」 「智紀は恵のパートナーです。命を狙う者もいるでしょう。だから僕が警護しやすい場所を選ばせてください」  ライさんが「いいですね」と人差し指を俺の鼻先にツンとさした。 「あ、うん。そういうことなら」と俺はぼそぼそと返事をする。  道元坂のパートナーか。今思えば、ただの性欲処理にしか過ぎなかったんじゃないかって思ってしまうのは、俺の心が弱くなってるからか?  俺って道元坂には、どう映っていたんだろう。俺にとったら、唯一の家族だって思ってたのに。  道元坂は俺なんて、もうどうでも良いのだろうか? 息子が居て、娘が居て。二人とも、道元坂の元に戻ってきたら、俺はもう……用無しなのか。
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