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闇のルール03

―智紀side―  さっきから何度も何度も、ライさんの携帯が俺の手の中で鳴っている。  相手は、道元坂だ。  携帯の画面には『道元坂 恵』と表示されている。  1分以上鳴っては切れ、またすぐに呼び出し音が鳴っていた。  これは……緊急ってことだよな?  何度も何度もかけてくるんだし。長時間、鳴り続けてるし。  俺が出ても平気だろうか?  道元坂は、俺には連絡してこないくせに、ライさんには定期的に連絡し合っていたのだろうか?  そう考えると、ちょっとムカッとする。  でもライさんは、道元坂のもとで働いているわけだから、連絡を取り合うのは当たり前か……。  俺は震える指で、通話ボタンを押すと、恐る恐る携帯を耳につけた。 「道元坂……あの……」  俺の声が震える。久しぶりすぎて、道元坂の声を聞くのに、物凄い緊張をした。 『智紀? ライは?』 「あ……えっと、今、風呂に入ってて」 『そうか』  電話口で、道元坂が「ふう」と息を吐きだすのが聞こえた。  俺じゃ、駄目ってわけ?  なんか激ムカツク。 「ライさんがいいなら、携帯を渡しに行くけど」  むすっとした声で、道元坂に不機嫌をあらわにした。 『蛍が、銃で撃たれた。医者の話だと、かなり厳しいと。智紀から、ライに伝えてもらえるか? 蛍の入院先はメールで送っておくから、と』 「あ……あ、うん。わかった。道元坂?」 『なんだ?』  電話だけじゃ、わからない。道元坂が、今どういう状況なのか。  声だけじゃ。道元坂の気持ちが、くみ取れねえだろ。  きっと辛いに決まっている。息子が大怪我を負って、医者から危ないって言われて……。  喜怒哀楽があまり無い道元坂だって、きっと辛いはずだ。 「大丈夫か? 俺、道元坂の……」  傍に居てもいいか? と聞こうとした。でも最後まで、道元坂に言わせてもらえなかった。 『駄目だ。今は会えない』 「なんで?」 『蛍を撃ったのは、私の娘の優衣だ。優衣は兄である蛍を撃った。蛍は瀕死の重傷だ。優衣はそういう女だ。何をするかわからない。だから私は智紀の存在を隠したい』 「俺はべ……別に平気だ。それとも何か? 道元坂は、娘にゲイだって知られたくねえのかよ」  隠す必要なんてねえし。 『ああ、知られたくない。智紀の命を危険に晒したくない』 「お、俺の命?」  俺はぽかんと口を開けた。  ただ『ゲイ』だってことを知られたくないってだけじゃねえの?  娘に『きもーい』って言われたくなくて、俺を遠ざけたんじゃなくて? 『私の言葉が上手く伝わってないようだが?』 「え? あ……ああ、んあ? そうでもねえけど」  俺はボソボソと言葉を濁した。

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