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闇のルール04
『私がゲイという事実は別に娘に知られても構わない。が、智紀を愛しているという事実は隠したい。優衣がどんな暴挙に出て、いつ智紀の命を狙うかわからないからな』
「それって、俺を第一に考えてくれてる……のか?」
俺はドキドキしながら、恐る恐る質問した。
だって、俺は家族を優先にして、道元坂に遠ざけられたって思ってたから。
そうじゃないなら、俺は……ホテルを逃げるように飛び出したのが馬鹿な行為だと認めないといけない。
きちんと道元坂に謝らないと。
『そうだ。蛍なら、ある程度の訓練は受けている。優衣に攻撃されても対処できると思っていたのだが……。優衣のほうが上手(うわて)だったようだ』
「あの、俺、道元坂に謝らないと。勘違いしてたから」
『気にしなくて良い。智紀がホテルを飛び出したことが結果的に良い方向に向いているかもしれない』
「え? ……どういう意味だ?」
『まだ私もはっきりとは言えない。ただ優衣が智紀の居所を見失っているのは確かだ』
俺も、狙われているって言いたいのかよ。
『智紀、気をつけろ。ライがいても、安心はするな。優衣はどんな形で接触してくるか、わからないから』
「ああ……うん。でも道元坂の娘なんだろ?」
『何も知らない5歳児の子どもとは違う。あの子は捻じ曲げられた情報しか耳に入れてない梓の血を充分に引き継いだ16歳だ。油断したヤツが負ける。そう思え』
「わかった」と俺は頷いた。
道元坂が、娘を信じてやらなきゃ駄目じゃん。
せっかく会えた娘なのに。どうして愛情の目で見てやらねえんだよ。
いや、俺が言えた義理じゃねえけど。
ついさっきまで、娘と息子と仲睦じく暮らしたいがために、遠ざけられたと怒ってた俺が、言うべきことじゃないけど、さ。
でも……ほら。道元坂の娘なんだろ? 大切にしてやらないと。
俺が一番だって言ってくれたのはめっちゃ嬉しいけどさ。すげー、嬉しくて思わず顔が緩んじまうけど。
『言いにくい事柄かもしれないが、ライに伝えて置いてくれ』
「あ、ああ。わかったよ。じゃあ」
俺はライさんの携帯を閉じると、テーブルに置いた。
蛍が重体だなんて。信じられない。
いつでも笑顔で、俺とゲームしてくれたいいヤツなのに。
初対面のときは、むかつくガキだったけど。俺に拳銃向けたり、暴言吐いたりしてたけどさ。
今じゃ、俺にとったら良き親友だったんだ。
「ライさんにも伝えなきゃ!」
俺は立ち上がると、風呂場へと足を向けた。
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