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最悪のシナリオ03

―恵side―  スーツの胸ポケットに入れてあった携帯が、激しい震動とともに鳴りだした。  ポケットに指を滑らせて携帯を取り出すなり、相手の名を確認した。  智紀から?  とうとう優衣に見つかったか……。  私の手から、智紀たちが離れた時点で見失ったかと思ったが、それは甘かったか。 「おい。智紀の携帯の発信場所を特定しろ」  助手席に座っている私の部下に命令を出してから、私は携帯の通話を開始した。 「智紀、大丈夫か?」 『た、助けてくれ……!! 俺、殺されるっ。あんたの娘、半端ないっ。何なんだよ』 「通話はそのままにしろ。すぐにそっちに向かう」と智紀に告げ、「場所の特定が出来次第、すぐに向かえ!!」と運転手に指示を飛ばした。 『俺、自分の居場所……ま、全くわかんねえ。道元坂に教えらんねえよ』 「智紀の場所は携帯の電波でわかる。私が行くまで、生き伸びる方法だけ考えろ」 『む……難しいこと言うなよ。黒いオッサン連中が、そこら中、うようよしてんだっ。俺、逃走中の番組を見るのは好きだけど、自分でやんのは出来ねえっての!! 逃げ切れても賞金もらえねえし……。自主電話もここら辺にはなさそうだし、なあ』 「智紀、何、わけのわからないことを言ってる?」 『あ、道元坂は知らねえ番組だ。テレビでやってんだよ、ボードゲームもあるし、DSのゲームもあったかな? ってそんなことより、ヤバいって。半端ねえよ、この状況!!』 「わかっている。優衣が私の組織のあちこちに手をだしているんだ。蛍も、ライも被害にあってる。それ以外にも……な。とにかく逃げろ。もしくは隠れろ。すぐに行く」 『やっぱ、ライさんも……。あんたの娘が言ってたよ』 「ああ。知っていたか」 『俺、死にたくない……よぉ』 「弱気になるな。必ず、行く」  突然、プツッと通話が途切れた。 「智紀? 智紀……!!」  くそ。通話は切るなと言ったのに。それとも、切られたのか!? 「場所の特定は? 出来たのか!?」 「ええ、もうそちらに向かってます。ただ智紀様が通話遮断後に動かれていたら、見つけるのは難しいかと……」  助手席の男が、言いにくそうに言葉にした。 「そんなことはわかっている!! 信号など無視しろ」  間に合ってくれ。頼む……智紀だけは傷つけさせない。  私は携帯を強く握りしめると、手の中でバイブが震えた。  智紀だろうか?  液晶画面を見て、私は目を細めた。  優衣から……?

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