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父と娘02
「恵も撃たれたたいですか? この女を守るおつもりなら、僕は恵でも容赦はしない」
「娘だからな」と私が言うなり、ライが俺の左肩に弾を打ち込んだ。
「それが僕の答え、だ……恵」
ライがキッと私を睨み、優衣へと視線を動かした。
神崎の腕が動いた。拳銃を手にし、倒れたままの状態で、ライの脳天に狙いを定めたのが見えた。
まずい! 間に合わないっ。
「莱……っ!?」
私は、スーツの下に隠し持っている拳銃に手を伸ばす。が、とうてい間に合わない。
ライも神崎には気づいている。だが、銃口は優衣に向いている。いまから照準を合わせていたら、間に合わない。
ドォンという音が鳴る。
「莱耶!」と私の声が響いた。
「そう何度も、私の手を煩わせないでくださいよ。ライさん」と、優衣の後ろに立っていたはずの城之内が、神崎の腕を足で踏みつけていた。
「城之内!?」と優衣が目を丸くして、悲鳴のように声をあげた。
「そもそも神崎を殺さなかった時点で、翔の失態ですよね?」とライがけろっとした表情で口を開いた。
「神崎から得られる情報は貴重……一発で仕留めたら怒ってたくせに」
「確かに」
「城之内……これは、ど、どういうことよ」
優衣が後ろにいる城之内を見て、睨み付けた。
「優衣様、見たまんまです。ライさんが貴方を撃った直後、私は山科と神崎に銃を向けた。私はもともと恵様の配下の人間ですから。それに銃の腕前は、ライさんの教えがあってこそ」
城之内 翔はにこりと笑って、神崎の手の甲に銃を撃つ。
ライもフッと笑いながら、神崎の銃を蹴り飛ばした。
「翔は蛍を陰ながらずっと守ってきた。あんたの護衛をしていても、蛍を傷つけた恨みから僕が感情のままに暴走しても僕側につく。それに恵に拾ってもらった恩もあるだろうし。簡単には裏切らない」
「簡単に私を裏切ったヤツが何を言うんだか」
私の独り言に、ライが私を睨んだ。
「恵、『僕の答え』と言ったはず。蛍をあんなにしておいて、『娘だから』と馬鹿なことを言うから僕は撃った」
「蛍は……生きてるの?」
優衣が痛みで顔をゆがませながら、問いかけてくる。
「それを知ってどうするんです?」
ライが優衣に冷ややかな視線を送る。
「蛍は……蛍は……」
強い意志の光を失った優衣が、うわごとの様に呟く。
「優衣様は、蛍様のことを」と意味ありげな表情で翔が言葉を濁した。
何を言わんとしているのかと理解したライが、ますます顔色を曇らせた。
「もう一発撃ちこんでやりたい」
「ライ、やめろ」
ライが振り返り、私の足元に一発ぶちかました。
「これで我慢しておきます」
両手に握っている銃をしまうと、スタスタと歩き出した。
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