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きょうだい01

―智紀side―  目の前に、死んだと何年も思っていた兄貴がいる。  兄貴に似ている男だと思ってたライさんが、兄貴だった。  廊下に出て、窓よりに立つと、兄貴の顔をじっと見つめた。  ずっとそばに居てくれた。  つらいときも、苦しいときも。悲しいときも。嬉しいときも。幸せな時も。  ずっと俺を守って、近くにいてくれた。 「智紀……」 「生きててよかった!」  兄貴が何か言いかけたところで、俺が上から言葉をかぶせた。 「兄貴、詳しく聞かない。道元坂と兄貴との間できっと何か難しい決めごとがあったんだろ? だからいいんだ。ずっとそばにいて、俺を守ってくれててありがとう」 「智紀、ごめん」 「謝るなって。俺、幸せだから。兄貴が死んだと思って、すんげー辛かった時も。ライさんが兄貴みたいに傍にいてくれて。ううん、兄貴のときよりもずっとずっと近くにいてくれて、甘えまくってた」 「ありがとう、智紀」  兄貴が腰を折って深くふかく頭をさげた。  そんなことすんなよ。  マジで、俺……兄貴が生きてるってだけで嬉しいんだから。  たった一人じゃない。  兄貴っていう家族がいるんだってまた、思えたんだから。

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