30 / 38
それから01
―蛍side―
「甘すぎませんか?」と莱耶が冷ややかな目で、俺を睨んできた。
白いベッドシーツに横になっている俺に、白いワイシャツだけを羽織った莱耶がデコピンをした。
俺が退院してから1か月が過ぎた。親父と智紀は、親父のマンションでいつも通りの生活に戻った。俺は、小森の屋敷に戻った。違うのは、小森の家で莱耶も一緒に暮らしている。
神崎派の人間は一掃した。俺が入院中に、翔と莱耶、カイルで、処分したらしい。
俺にはすごい強い味方だちに囲まれている。俺が何もしなくても、俺の過ごしやすいように環境が整えられていた。
「甘い……かもしれない」
「『かも』じゃない。甘いんです。僕だったら生かしておかない。あんな女」
ふんっと莱耶が鼻を鳴らして、ベッドに荒々しく腰をかけた。
「莱耶が怒ってくれるから。俺は満足」
「は? 満足? どこが? 僕は満足なんて出来ない。この屋敷、あの女がいるのかと思うだけで、胸がムカムカして吐き気が止まらない」
莱耶が俺の上に跨る。まだ眠くて、ベッドで横になっている俺の胸に手を置いて、莱耶がキスをしてきた。
「……ん、んぅ」と莱耶が色っぽい声を出して、俺の乳首を軽くつまんできた。
「誘ってるの? 莱耶」
「ええ。ムカムカして苛々が止まらないんです」
「3時間前まで、乱れたのに」
「もっと……シテよ」
ワイシャツの下に何も身に着けていない莱耶が裾をめくりあげて、にっこりと笑った。
「あと1回だけな」
俺は莱耶の手を掴んで、体制を変えた。莱耶を下に組み敷いてから、莱耶の足を広げた。
「莱耶さんは?」
部屋を出ると翔が、訪ねてきた。廊下で俺が出てくるのを待っていたようだ。
「寝てる。寝かせておいて。親父にも連絡いれてあるから、大丈夫。優衣の様子は?」
廊下を歩きながら、俺は隣を歩く翔に聞く。翔が、暗い表情になると首を左右に振った。
「こちらに来てから、食事もとらず、真っ暗な部屋でただ座っているだけ。点滴をいれますが、目を離すとすぐに抜いてしまって……困ってます」
「そうか。大学に行く前に、優衣に会おう」
え? と翔が小さく驚いた声をあげた。
「なんのために莱耶を気絶させるまでヤッたんだと思う? 莱耶が起きてたら、絶対に会わせてくれないから」
「甘いお方だ」
「莱耶にも朝、それで怒られた」
俺は肩をすくませてから、笑った。
確かに甘いんだろう。俺を殺そうとした優衣を許してるんだから。
ともだちにシェアしよう!