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第2話
「本当は、もっとトキとの時間を過ごしたいんだけど。ごめんね、朝しか一緒にいられなくて」
「んーん。いいの。俺は、ルークと会えるだけで幸せ」
しょぼんとするルークに朱鷺は笑いかけると、少し照れながら頬にキスをした。
今まで朱鷺は付き合ってきた女性の頬に何度もキスをしてきたが、ルークのように照れたことはない。ルークにすると、恥ずかしくて、でもいっぱいしたいと思う。
「僕も、トキに会えて幸せだよ」
ルークも同じように、朱鷺の頬にキスをする。
「…………おふたりさーん。そろそろ甘い時間を終わらせて、そいで現実に戻りましょーや」
朱鷺が背を向ける方から声をかけられて、慌ててルークから離れる。勢いよく後ろを振り向けば、朱鷺の兄である汰樹 がニヤニヤとしながら立っていた。
「に、兄さん!いつも言うけど、俺とルークの甘い時間を見ないでください!」
「店の中でイチャこらしてんのが悪いんだ。ほら、今日は朝イチで着付け指導の予約が入ってんだ。それに、ルークの秘書も迎えにきてんぞ。早く行け」
ルークの後ろを汰樹が指差すと、そこにはいつの間にかいたらしいルークの秘書のがいた。
仕方ないが、甘い時間から目を覚まして現実に戻る時が来たようだ。
「また明日来るよ、トキ」
「うん。待ってる、ルーク」
名残惜しそうにルークと朱鷺はキスをすると、現実に戻るように背を向けた。
ルークは、大企業の社長として。
朱鷺は、呉服屋『山寺 』の店長として。
今日もまた、いつもと変わらない1日が始まった。
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