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第5話
朱鷺は物凄い形相で汰樹に詰め寄った。
「どう言うことなんですか、兄さん。何で兄さんは、ルークの両親のことを知ってるんですか?」
「いや、な、朱鷺。その、あの、ちょっと待ってくれ!」
必死で朱鷺をなだめようとするが、怒りで我を忘れているから無理な話だ。
何せ、自分も会ったことのないルークの両親のことを汰樹が知っているのだ。何かがある。もしかしたら、ここ2、3日来ていない理由も知っているかもしれない。
そう考えて、こうして汰樹に詰め寄っている。
逃げる汰樹と、それを追う朱鷺。すると、逃げていた汰樹が何かに引っ掛かり、後ろ向きに倒れようとしていた。
「おわっ!」
「兄さん!」
朱鷺が咄嗟に手を伸ばして汰樹の腕を握ったが、その拍子に朱鷺も一緒になって倒れた。朱鷺が汰樹を押し倒すような形で。
その状態で2人が痛みに堪えていると、上から聞き覚えのある声が聞こえた。
「社長が来なさすぎて、兄弟でイチャつくようになったんですか?」
朱鷺が勢いよく顔をあげると、ルークの秘書が立っていた。秘書が来ているということは、ルークも来ているかもしれない!
そう考えた朱鷺が、周りを見回そうとした時だ。ルークの秘書が、朱鷺を汰樹の上から押し退けた。
「イーライ~。ごめん、朱鷺にバレた!」
「大丈夫ですよ、タキ。もう大体の準備は終わりましたし、タキが心配する必要はありません。今日はこいつを迎えに来ただけです」
社長であるルークの恋人の朱鷺を“こいつ”呼ばわりする秘書のイーライ。朱鷺を迎えに来たと言うのに、汰樹を抱き締めながら甘ったるい笑みを見せ尻を揉んでいる。
「迎えに来たって、俺を?」
「はい。社長がお待ちですので、さっさと立ってください。タキも一緒に来てください。最後の準備、お願い出来ますか?」
「おー。じゃあ、店閉めるの手伝ってくれるか?実を言うと、まだ終わってなくてな」
「いいですよ、タキ。ほらお前もさっさと立ってタキを手伝いなさい」
イーライの、自分と汰樹の扱いに差を感じながら朱鷺は立ち上がった。
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