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第6話
いろいろと気になっている朱鷺が、ものすごい早さで店の片付け等を終わらせた。そして今は、イーライの運転する車に乗っている。車の中で、汰樹がルークの両親に会っていたこととか、ルークが来ない理由とかをイーライから聞いていた。
「じゃあルークは、俺にプロポーズをする準備のためにここ最近会いに来なかったってこと?」
「そうです。その準備にタキの知識を借りまして。その時に、社長のご両親が来たと言うわけです」
「ビックリしたぜ。もしかしたら、朱鷺との関係を怒ってんじゃないかって思ってたんだけどさ。朱鷺の写メ見た瞬間、ルークのことめっちゃ褒めてたよ。よくこんなイケメンを捕まえたなって」
「社長のご両親は、心の広い御方なので。ほら、着きましたよ。ここがプロポーズ会場です」
朱鷺が車の窓から外を見ると、見覚えのある建物だった。
イーライが連れてきたのは、山寺の常連である料亭だった。この料亭の女将がよく着物を買いに来るのだ。
「ここ?ここにルークが、」
「そうです。ほら、さっさと降りてください。まだあんたの準備が終わってないんですから」
「そうだぞ、朱鷺。ほら、お前はまず俺と一緒にこっちな」
車から降りた朱鷺の手を汰樹が握って、そして料亭のそばにある離れに向かって歩き出した。離れに何の用がと朱鷺は思ったが、中に入って何のためにここに来たかすぐに分かった。
「今日のために、俺が見繕った着物だ。さっさと着付けてやるから、来いよ朱鷺。兄ちゃんからのプレゼントだ」
離れに置いてあったのは、真っ黒な生地にキレイな月が描かれた着物だった。
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